昭和後期あるある~足の指でテレビのチャンネルを回す
リモコンがない時代、こたつに入ったまま立ち上がるのが面倒で、足の親指と人差し指で器用にガチャガチャとダイヤルを回すお父さんが必ずいました。
※一言で言うと行儀が悪いですね。
こたつに入ったまま動きたくない、でもテレビのチャンネルは変えたい。そんなとき、足の親指と人差し指を器用に使ってダイヤルをガチャガチャと回すお父さんが、昭和後期のどの家庭にもひとりはいたのではないでしょうか。今のようにリモコン一つで済む時代からすると信じられない光景ですが、当時としてはごく自然な家庭の風景でした。今回は、この「足の指でチャンネルを回す」という昭和後期ならではのあるあるについて、当時の暮らしぶりや背景を振り返りながら詳しく紹介します。
1.リモコンがなかった時代のテレビ事情
昭和後期、多くの家庭にあったテレビは、今のようにボタン一つで操作できるものではありませんでした。チャンネルを変えるには、本体についたダイヤルを直接手で回す必要があり、テレビとの距離が近くなければ操作できない仕組みだったのです。当時はチャンネル数も限られていましたが、それでも家族それぞれ見たい番組が違うことは多く、誰かが立ち上がってダイヤルを回す場面は日常茶飯事でした。
とはいえ、寒い冬にこたつに入ってしまうと、なかなか立ち上がる気になれないのが正直なところです。特に夕食後、こたつで丸くなっているお父さんにとって、その数歩の距離すら億劫に感じられたのでしょう。そこで編み出されたのが、足の指を使ってダイヤルを操作するという、なんとも器用な技だったわけです。
当時のテレビのダイヤルは、今のボタンのようにワンタッチで切り替わるものではなく、カチカチと音を立てながら一段階ずつ回していく方式でした。そのため、手で回すにしても意外と力が必要で、勢いよく回しすぎると行き過ぎてしまうこともしばしばです。足の指という不安定な部位でこの操作をこなしていたお父さんたちの技術は、今思えばなかなかのものだったといえるでしょう。子供たちの中には、その様子を真似しようとして失敗し、家族に笑われたという思い出を持つ方もいるのではないでしょうか。
2.なぜ足の指でチャンネルを操作していたのか
足の指でダイヤルを回すという行動には、単なる面倒くさがりだけでは片付けられない事情もありました。こたつのある茶の間は、テレビと座椅子の距離が近い間取りが多く、足を伸ばせばちょうどダイヤルに届く配置になっていた家庭も少なくありません。そのため、手を伸ばすよりも足を伸ばすほうが自然、という物理的な条件も揃っていたのです。
さらに、当時のお父さんたちの多くは仕事から帰宅後の限られたくつろぎの時間を大切にしていました。こたつから出て寒い思いをするよりも、少々行儀は悪くても暖かいまま用事を済ませたいという気持ちが、この独特な習慣を生んだとも考えられます。母親や子供たちからは「行儀が悪い」と何度もたしなめられながらも、多くのお父さんがこの動作をやめなかったのは、それだけ居心地の良さを優先していた証拠なのかもしれません。
また、当時は今のように娯楽の選択肢が多くなかったこともあり、テレビは一家にとって数少ない大きな楽しみでした。だからこそ、少しでも快適な体勢でテレビと向き合いたいという思いは、どの家庭のお父さんにも共通していたのではないでしょうか。足でダイヤルを操作する姿は傍から見れば滑稽に映るかもしれませんが、本人にとっては至極真剣な、くつろぎのための工夫だったのです。
3.こたつと茶の間が生んだ昭和特有の光景
この光景が生まれた背景には、当時の住宅事情も関係しています。昭和後期の一般的な家庭では、茶の間にこたつとテレビが向かい合わせに置かれ、家族全員がその狭い空間に集まって過ごすのが定番のスタイルでした。個室でそれぞれがテレビを見るという文化はまだ一般的ではなく、家族の団らんの中心には必ずテレビがあったのです。
その分、チャンネル争いも頻繁に起こりました。プロ野球中継を見たいお父さんと、歌番組を見たい子供たちとの間で、ダイヤルの奪い合いが起きることも珍しくありませんでした。足の指でダイヤルを回す姿は、そうした家族の攻防戦の中で、いかに素早く、そして楽な体勢のままチャンネルを確保するかという、ある種の生活の知恵でもあったといえるでしょう。
こたつのある茶の間には、テレビ以外にも卓上に置かれたみかんや、お茶を飲みながら新聞を読む祖父母の姿など、昭和の家庭ならではの光景がいくつも重なっていました。狭い空間に家族が身を寄せ合い、同じ番組を見て笑い合ったり言い争ったりする時間そのものが、今振り返れば非常に贅沢なひとときだったのかもしれません。足でチャンネルを変えるお父さんの姿も、そうした賑やかな団らんの一部として記憶されているのではないでしょうか。
4.リモコンの普及とともに消えていった習慣
昭和の終わりから平成にかけて、テレビにリモコンが標準で付属するようになると、この光景は徐々に姿を消していきました。リモコンさえあれば、こたつに入ったまま手元のボタンでチャンネルを変えられるため、わざわざ足を使う必要がなくなったのです。便利さと引き換えに、どこか人間味のあるこの習慣は失われていきました。
今の子供たちにこの話をしても、なぜ足でチャンネルを変える必要があったのか、そもそもピンとこないかもしれません。しかし、当時を知る世代にとっては、お父さんの器用な足技は、家族団らんの記憶と分かちがたく結びついた懐かしい光景として心に残っているのではないでしょうか。
リモコンの登場は、テレビの視聴スタイルだけでなく、家族の過ごし方そのものを少しずつ変えていきました。立ち上がる必要がなくなったことで、テレビとの距離はより一層縮まり、誰もが手元で自由にチャンネルを選べる時代になったのです。便利になった一方で、家族全員でダイヤルの取り合いをするあの賑やかさは、少しずつ失われていったともいえるでしょう。
5.まとめ|行儀の悪さの中にあった昭和の温かさ
足の指でテレビのチャンネルを回すという行動は、行儀の面から見れば決して褒められたものではありません。しかし、その裏には、寒い冬にこたつから出たくないという素朴な気持ちや、限られた時間の中で家族と過ごす団らんを大切にしたいという思いが隠れていたようにも感じられます。
便利な家電が当たり前になった今だからこそ、こうした少し不器用で人間くさい昭和のワンシーンには、独特の温かさがあるように思います。当時を知る方はもちろん、知らない世代の方にとっても、こうしたあるあるを通じて昭和の暮らしぶりに触れてみるのも面白いのではないでしょうか。
こうした「あるある」は、テレビの操作方法という些細な出来事にとどまらず、当時の家族の距離感や暮らしのテンポそのものを映し出しているように感じられます。何かを見たいと思ったら家族みんなで相談し、時には言い争いながらもひとつのチャンネルに落ち着いていく。そんな面倒でありながらも温かいやり取りが、今よりもずっと日常に溶け込んでいたのが昭和という時代だったのかもしれません。
現代では一人一台スマートフォンを持ち、それぞれが好きな時間に好きな映像を楽しめるようになりました。その利便性は間違いなく素晴らしいものですが、家族が同じ画面を囲み、誰かが足でチャンネルを変えるたびに笑いが起きていたあの時間には、今ではなかなか味わえない独特の一体感があったように思えてなりません。ふと懐かしさを感じたときは、当時を知る家族や友人と、こうした昭和のワンシーンについて語り合ってみるのも良いのではないでしょうか。
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