小さな箱から出てくる丸いガムが宝物だった──昭和の「マルカワのガム」フィリックスとマーブルで友達と1粒交換した記憶

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昭和あるある
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はじめに──あの小さな箱を覚えていらっしゃいますか?

昭和後期あるある~「マルカワのマーブルガム」の小さな箱

フィリックス(黒い猫)やオレンジ、いちごのイラストが描かれた小さな箱。中に丸いガムが4つ入っていて、友達と1粒ずつ交換する。

駄菓子屋の棚にずらりと並んだ、手のひらにすっぽり収まるほどの小さな箱。フルーツのイラストが描かれた「マーブルガム」、黒い猫のキャラクターが描かれた「フィリックスガム」──丸川製菓(マルカワ)のガムは、昭和の子どもたちにとってお小遣いで最も手軽に買えるお菓子のひとつでした。

箱を開けると、1センチほどの丸いガムが顔をのぞかせる。それを友達と「1粒あげるから1粒ちょうだい」と交換し合うのが、当時の小学校の休み時間の定番の光景でした。5円、やがて10円という価格は、昭和の子どものお小遣い事情にちょうどよく、駄菓子屋に立ち寄るたびに手が伸びる存在でした。

本記事では、丸川製菓のマーブルガムとフィリックスガムが昭和の子どもたちに愛され続けた理由と、あの小さな箱にまつわる記憶を詳しく振り返ってまいります。


第1章 マルカワのガムとはどんなお菓子だったのか

明治21年創業の老舗菓子メーカー

丸川製菓株式会社は、1888年(明治21年)に愛知県名古屋市で創業した老舗菓子メーカーです。当初はげんこつ飴の製造・販売を行い、昭和22年(1947年)にチューインガムの製造を開始しました。以降は「ガムひと筋」を貫き、現在もガム専業メーカーとして安定した経営を続けています。

「マルカワのガム」として多くの方に親しまれているのが、1959年(昭和34年)に発売されたマーブルガム(オレンジマーブルガム)です。1粒が直径1センチほどのボール状で、フルーツのイラストが描かれた小さな紙箱に入っているスタイルは、発売当初からほぼ変わっていません。

「丸くなってしまったから、丸いガムを作ろう」という逆転の発想

マーブルガムが丸い形になった理由には、ちょっとした逸話があります。もともと長方形の糖衣ガムを作ろうとしていたものの、機械の都合でどうしても丸くなってしまった。ならばいっそ丸いガムを作ってしまおう──そんな逆転の発想から、丸いマーブルガムが誕生したのです。

和菓子の製造経験があり、団子やまんじゅうなどの丸い形を作るノウハウを持っていた丸川製菓ならではの発想でもありました。こうして生まれた丸くてカラフルなガムは、発売当初のオレンジ味から出発し、いちご・グレープ・ソーダ・コーラなどのフレーバーへと展開していきました。

小さな紙箱というパッケージの工夫

マーブルガムが紙箱に入っているのは、戦後という時代背景から来ています。ビニールもプラスチックも貴重だった当時、紙箱は最も現実的な選択肢でした。しかしその小さな箱には、当たりを外から見破られないようにするための印刷技術など、小箱製造業者のトップクラスの技術が詰め込まれていたとされています。手のひらに乗る小さな箱の中に、当時の職人技が宿っていたのです。


第2章 フィリックスガム──黒い猫のキャラクターが描かれたガム

1960年に発売されたもうひとつの「マルカワのガム」

マーブルガムと並んで「マルカワのガム」として親しまれてきたのが、フィリックスガム(フィリックスフーセンガム)です。1960年(昭和35年)に発売されたこちらは、フルーツイラストのマーブルガムとは異なり、黒い猫のキャラクターが描かれたパッケージが特徴的なフーセンガムです。

「10円ガム」や「ネコガム」の愛称でも親しまれたフィリックスガムは、1994年には売上が1億円を突破するなど、丸川製菓を代表するもうひとつの看板商品となっていきました。

「例のキャラ」の正体と版権をめぐる歴史

フィリックスガムのパッケージに描かれた黒い猫のキャラクターには、興味深い歴史があります。発売当初、このキャラクターは本家のアメリカのアニメキャラクター「フィリックス・ザ・キャット」とは似ていない、独自の「味わいのある」デザインでした。丸川製菓によると、当初は「熊」をモチーフにしたキャラクターだったとされています。

その後、1980年代に正式にフィリックス・ザ・キャットの版権を取得。段階的にパッケージが本家に近いデザインへと更新されていきました。昭和の子どもたちが親しんだあの「少し不思議な黒い猫」のイラストは、版権取得以前の独自キャラクターだったのです。


第3章 昭和の子どもたちが育んだ「1粒交換」の文化

「1粒ちょうだい」という自然なコミュニケーション

マーブルガムが4粒という個数だったことは、「分け合い」の文化を生む上でちょうどよい設定でした。友達と一緒に駄菓子屋に行き、それぞれ違うフレーバーを1箱ずつ買って、「1粒交換しよう」と持ちかける。オレンジを持っている子がいちごを持っている子と1粒ずつ交換することで、両方の味を楽しめる──。

この「1粒交換」は、お菓子の交換であると同時に、友達同士の気持ちの交換でもありました。「あなたと一緒に食べたい」という気持ちが、マーブルガムの丸い1粒に込められていたのです。現代のSNSで「シェア」することとは違う、手から手へと直接渡す温かいコミュニケーションがそこにありました。

当たりが出るとドキドキした記憶

マーブルガムには「当たり付き」の仕組みがありました。箱の中に当たりくじが入っていると、同じ商品をもう1個もらえるというシステムです。発売当初は4粒入りにも当たりが入っていましたが、1990年(平成2年)に6粒入りへとリニューアルされた際、当たり付きは6粒入りのみとなりました。

箱を開けてドキドキしながら当たりを確認する瞬間、当たりが出て「やった!」と歓声を上げる瞬間、外れて「残念……」と肩を落とす瞬間──当たりをめぐる小さなドラマも、マーブルガムの記憶のひとつです。

価格と時代の変遷

マーブルガムの価格は時代とともに変化してきました。発売当初は4粒入りで5円、昭和49年(1974年)には4粒10円、そして平成2年(1990年)からは6粒で20円に変わりました。

昭和後期の子どもたちが親しんだのは「4粒10円」の時代です。10円で4粒という設定は、少ないお小遣いの中でも複数の友達と分け合える絶妙な価格と量のバランスでした。10円玉一枚を握りしめて駄菓子屋に駆け込んだあの体験は、多くの昭和世代の方が共有する記憶です。


第4章 小さな箱が持っていた「本物のおもちゃ箱感」

箱を開ける瞬間の儀式

マーブルガムの小さな紙箱を開ける行為には、独特の儀式のような側面がありました。箱のフラップを折り開け、カラフルな丸いガムたちが姿を現す瞬間。「今日はどのフレーバーにしようか」と選んで買ったガムが、期待通りの色で入っていたときの小さな満足感。

一気に口に全部入れてしまいたい衝動を抑えながら、1粒ずつ大切に食べるか、友達と分け合うか。その選択の自由が、子どもたちにとって「自分で決める楽しさ」を与えてくれていました。

パッケージに描かれたイラストとフレーバーのつながり

マーブルガムのパッケージには、オレンジ、いちご、グレープなどフレーバーに対応したフルーツのイラストが描かれており、子どもでも直感的にどの味かが分かるようになっていました。カラフルなガムの粒の色もフレーバーを示しており、視覚と味覚が連動した楽しい体験を提供していました。

フィリックスガムのパッケージに描かれた黒い猫のキャラクターもまた、子どもたちに強い印象を残しました。「ネコガム」という愛称が自然に生まれるほど、あのキャラクターはマルカワのガムのシンボルとして定着していったのです。


第5章 マルカワのガムが令和に至るまで愛され続ける理由

変わらないスタイルが生む安心感

マーブルガムは1959年の発売以来、基本的な形やスタイルを変えずに販売が続いています。丸い粒、小さな紙箱、フルーツフレーバー──この変わらないスタイルが、世代を超えた安心感を生んでいます。

昭和後期に子どもとして食べていた世代が大人になり、自分の子どもや孫と一緒にマーブルガムを買う。「お父さんが小さいときにもこれ食べてたよ」という会話が生まれ、思い出とともにガムが次の世代へ受け継がれていく。この循環こそが、60年以上にわたって愛され続けている理由のひとつではないでしょうか。

世界25か国以上に輸出されるグローバルな人気

マーブルガムは国内だけでなく、海外にも展開しています。1959年の生産開始時から輸出を始め、2018年時点ではサウジアラビアやブラジルなど25か国以上に輸出されています。

日本の小さな駄菓子屋で子どもたちが1粒交換していたあのガムが、世界25か国以上の子どもたちにも届いているというのは、昭和の子どもたちが想像もしなかった展開です。小さな丸いガムが持つ普遍的な魅力は、国境を超えていたのです。

昭和レトロとして再評価されるマルカワのガム

近年の昭和レトロブームの中で、マルカワのガムは「懐かしいあのガム」として再び注目を集めています。コンビニやドンキ・ホーテ、通販サイトでも購入できるようになり、当時を知る世代が懐かしさから手に取るだけでなく、若い世代が「昭和のお菓子」として新鮮に発見する機会も増えています。


まとめ──小さな箱1つに詰まっていた昭和の友情

フルーツのイラストが描かれた小さな紙箱のマーブルガムと、黒い猫のキャラクターが描かれたフィリックスガム。丸川製菓が生み出したこれらの「マルカワのガム」は、4粒というシェアしやすい個数と手の届く価格で、昭和の子どもたちの「1粒交換」という文化を育てました。

箱を開ける瞬間のドキドキ、当たりが出たときの喜び、友達と1粒ずつ交換した温かさ──それらすべてが、小さな紙箱の中に詰まっていました。

1959年の発売以来、変わらないスタイルを守り続けるマーブルガムは、今も現役の商品として販売されています。あの小さな箱を手に取るたびに、昭和の駄菓子屋の風景と、友達と分け合った夏の記憶がよみがえってくる方も多いのではないでしょうか。


本記事は昭和の駄菓子・ガム文化に関する歴史的・文化的記録を目的としています。丸川製菓および各商品に関する情報は、Wikipedia・東洋経済オンライン・デイリーポータルZ等の取材記事に基づくものです。


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