昭和後期のCMあるある~「ちゃっぷいちゃっぷい、どんとぽっちぃ」(大日本除虫菊・金鳥)
原始人風のキャラクターが発する謎の言葉。使い捨てカイロ「どんと」のCMとして、冬の小学校の教室でみんなが震えるフリをしながら連呼していました。
冬になると頭の片隅で勝手に再生される、あの謎の呪文。「ちゃっぷいちゃっぷい、どんとぽっちぃ」――意味も分からないまま、小学校の教室で友達と震えるフリをしながら連呼していた人は少なくないはずです。今の若い世代が聞けばただの呪文にしか聞こえないこの言葉も、昭和後期を過ごした人にとっては冬の風物詩のような存在でした。この記事では、金鳥の使い捨てカイロ「どんと」のCMがなぜこれほど記憶に刻まれたのか、その誕生の背景から言葉の意味、出演者、当時の子どもたちの反応まで、事実関係を丁寧に確認しながらまとめていきます。
1. 「ちゃっぷいちゃっぷい、どんとぽっちぃ」とは何だったのか
「ちゃっぷいちゃっぷい、どんとぽっちぃ」は、大日本除虫菊(金鳥)の使い捨てカイロ「どんと」のテレビCMで使われていたフレーズです。原始人風の格好をしたキャラクターが、風の吹きすさぶ荒野のような場所で震えながらこの言葉を繰り返すという、強烈なインパクトを持つ内容でした。放送されていたのは1983年(昭和58年)の冬からとされており、原始人の設定で登場したこのパターンが最初の形で、その後もシチュエーションを変えた続編がいくつも制作されています。当時、この不思議な響きの言葉は子どもたちの間で流行語のようになり、寒い日になると誰かが口にする、いわば「あるある」フレーズとして定着していきました。テレビの前でCMが流れるたびに、家族で一緒に真似をしていたという人も多く、世代や地域を問わず広く浸透していたことがうかがえます。
2. 使い捨てカイロ「どんと」の誕生秘話
「どんと」自体が世に出たのは1980年(昭和55年)のことです。「もまずにあたたまる」という特長が当時としては珍しく、発売後は着実に売り上げを伸ばしていきました。それまでカイロといえば灰を使う懐炉が主流だったこともあり、袋を開けるだけで発熱する手軽さは大きな驚きをもって受け止められたようです。ちなみに使い捨てカイロという製品そのものは日本で開発されたもので、日本パイオニクスが開発し、ロッテ電子工業から「ホカロン」として全国発売されたのが先行製品にあたります。金鳥の「どんと」は、そうした使い捨てカイロが世の中に広まっていく流れの中で登場し、独自のキャラクター性の強いCM展開によって知名度を一気に押し上げた商品といえます。パッケージのデザインは発売当初からほとんど変わっておらず、令和の今でもドラッグストアの店頭で同じ絵柄を目にすることができます。
3. 原始人CMが生まれた背景と出演者
「ちゃっぷいちゃっぷい、どんとぽっちぃ」を連呼する原始人風CMには、落語家の桂文珍さんと、コメディアンのぼんちおさむさんが出演していました。二人が原始人の格好をして、風がピューピューと吹きすさぶ荒野の中で「ちゃっぷい、ちゃっぷい!」「どんとぽっちいー!」と繰り返すという内容で、シュールな設定と勢いのある掛け合いが視聴者の記憶に強く残ることとなりました。金鳥のCMといえば、関西のお笑い芸人や著名なタレントを積極的に起用してきた歴史があり、印象に残るフレーズと個性的な出演者の組み合わせで話題を集めるのが同社の得意とするところでした。この原始人パターンが好評だったことを受けて、その後は舞台設定を変えた続編も制作されており、金鳥のCMシリーズの中でも語り継がれる存在になっています。
4. 「ちゃっぷいちゃっぷい」の意味を分解する
このフレーズは、実はれっきとした意味を持つ言葉です。「ちゃっぷいちゃっぷい」は「寒い寒い」を意味する言い回しで、「どんと」は商品名、「ぽっちぃ」は「欲しい」を意味しています。つまり全体をつなげると「寒い寒い、どんとが欲しい」という、そのままカイロの購買意欲を刺激するコピーになっているわけです。原始人という設定と、方言のようなくだけた言い回しの組み合わせが、意味を知らなくても耳に残る中毒性を生み出していたと考えられます。子ども心には意味など分からなくても、リズムの良さだけで真似したくなる言葉だったのではないでしょうか。実際、当時を知らない世代がドラマなどで偶然このフレーズを耳にして、その意味を検索して初めて知ったというケースも見られ、時代を超えて興味を引く言葉であり続けていることがわかります。
5. 教室で連呼した昭和の子どもたちの記憶
冬の小学校の教室や登下校の道すがら、「ちゃっぷい、ちゃっぷい、どんと、ぽっちい」とわざと震えるフリをしながら口にしていた記憶を持つ人は多いようです。CMの中の原始人のジェスチャーをそのまま真似て、友達同士で寒さを演出しながら盛り上がる――そんな光景が当時の教室ではごく普通に見られました。休み時間に誰かが言い出すと連鎖的にクラス中に広がっていくような感覚もあり、テレビCMのフレーズがここまで子どもたちの日常に浸透した例は決して多くはありません。この現象は「どんと」のCMが持っていた言葉のインパクトの強さと、リズムの心地よさを物語っています。大人になった今でも、真冬に肩をすくめる瞬間にふとこのフレーズが口をついて出てくるという人も少なくないでしょう。
6. 「どんと」というネーミングの由来
「どんと」という商品名は、全国各地に古くから伝わる正月飾りを燃やす火祭りの行事「どんと焼き」「とんど焼き」に由来しています。正月飾りを火で焼いて無病息災を祈るこの風習にちなみ、パッケージにも焚き火を囲む子どもたちのイラストが用いられ、あたたかいイメージを前面に出したデザインとなりました。このパッケージデザインは発売から長い年月を経た現在も大きく変わっておらず、昭和の香りを今に伝える数少ない商品のひとつといえます。商品名の由来を知ると、単なる語呂の良さだけでなく、日本の伝統行事に根ざした温かみのある発想から生まれたネーミングであることが見えてきます。
7. 金鳥のCM文化と「どんと」が果たした役割
金鳥のCMは「どんと」に限らず、昭和から平成にかけて数多くの流行語を生み出してきました。殺虫剤のCMでは、アイドル時代の郷ひろみさんと東京乾電池の柄本明さんが共演した回や、横山やすしさんとの掛け合いなど、その時々の人気タレントを起用しながら、耳に残るフレーズで商品名を刷り込む手法を得意としてきました。「どんと」のCMもその延長線上にあり、原始人という突飛な設定を採用することで、他の暖房器具や日用品のCMとは一線を画す存在感を放っていました。当時のテレビは家族で一緒に見るのが当たり前だったこともあり、子どもだけでなく大人も一緒になってフレーズを口ずさむという光景が全国各地で見られたようです。こうした世代を超えた広がりこそが、「どんと」のCMが単発のヒットで終わらず、何十年も語り継がれる理由になっていると考えられます。
8. 令和の今も色あせない理由
「ちゃっぷいちゃっぷい、どんとぽっちぃ」というフレーズは、テレビドラマの中で懐かしいアイテムとして取り上げられることもあり、平成生まれ以降の世代にもその存在が伝わる機会が増えています。意味を知らないまま耳にした人が、その響きの面白さに惹かれてネットで由来を調べる、という流れも今では珍しくありません。商品自体が発売から40年以上経った現在もほぼ同じパッケージデザインで販売され続けていることも、このフレーズの記憶を風化させない一因になっています。ドラッグストアの季節コーナーで「どんと」のパッケージを見かけるたびに、あの原始人のCMを思い出すという人は、決して少なくないはずです。世代を超えて語り継がれる昭和のCM文化の中でも、「どんと」は特に息の長い存在といえるでしょう。
9. まとめ
「ちゃっぷいちゃっぷい、どんとぽっちぃ」は、単なるCMのキャッチコピーという枠を超えて、昭和後期を過ごした子どもたちの共通言語のような存在になっていたフレーズです。1980年に発売された使い捨てカイロ「どんと」が、1983年冬からの原始人風CMによって一気に知名度を高め、教室での連呼という形で世代を超えた記憶に残ることとなりました。意味を知らずに口にしていた人も、今回その成り立ちを知ることで、あの冬の教室の光景がより鮮やかによみがえってきたのではないでしょうか。今後も寒い季節を迎えるたびに、あの原始人のフレーズをふと思い出す人は多いはずです。
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