昭和後期あるある~パナップの「スマイル顔」
縦に長いアイス「パナップ」。中に入っているフルーツソースが、掘り進めると顔(スマイル)の形になって現れる。
縦に長いカップの中身を、スプーンでまっすぐ掘り進めていくと、フルーツソースがふいに笑顔の形になって現れる。江崎グリコの「パナップ」を食べたことがある人なら、一度はこの体験にちょっとした胸の高鳴りを覚えたのではないでしょうか。掘っても掘ってもハートしか出てこない日もあれば、思いがけずニコッと笑う顔に出会える日もある。そんな小さな運試しが、おやつの時間を特別なものに変えてくれました。今回は、パナップの歴史とスマイル顔が生まれた背景、昭和後期に子ども時代を過ごした世代の記憶に残る「あるある」、そして現在のラインナップまでを振り返りながら、その魅力をじっくり解説します。
1.パナップとは?グリコが贈るロングセラーアイス
パナップは、江崎グリコが1978年(昭和53年)に発売したカップ入りアイスクリームです。商品名は、当時若い女性の間で流行していた、ロングスプーンでパフェを気軽に楽しむスタイルから着想を得たもので、「パフェ」と「カップ」を組み合わせた造語だといわれています。バニラアイスの中にフルーツ味のソースが縦方向に充填されているのが最大の特徴で、スプーンを入れるたびにソースの断面がさまざまな表情を見せてくれます。発売から40年以上が経った現在もロングセラー商品として親しまれ、コンビニやスーパーの冷凍ケースで見かけたことがある人は多いはずです。乳成分をベースにした種類別「ラクトアイス」に分類され、後味がすっきりしているのも特徴の一つです。見た目はシンプルなカップアイスですが、蓋を開けてスプーンを入れる瞬間のわくわく感が、世代を問わず支持され続けている理由といえるでしょう。
2.「スマイル」が生まれた瞬間ー2003年の口コミブーム
パナップの縦型ソースは、もともとハート形に近い断面を描くように充填されていました。その中に、断面がたまたま人の顔のように見えるものが混じっており、これが2003年ごろに口コミで話題となって「スマイルパナップ」として広く知られるようになりました。インターネットの掲示板やブログを通じて「開けたら笑顔だった」という声が広がり、偶然の産物だったはずのスマイル顔が、いつしかパナップを象徴する存在になっていきます。その後は、まゆ毛付きのスマイルやハート、ニコニコ顔、アザラシの形など複数のバリエーションも登場し、開ける前から「今日はどんな顔かな」と想像する楽しみをさらに広げていきました。
3.なぜ顔の形に?縦型ソースのからくり
スマイル顔は専用の型でソースを充填する過程で偶然生まれるもので、必ず毎回顔の形になるわけではありません。グリコの公式サイトでも「たまにソースが笑顔になっています」と説明されている通り、出会えるかどうかは開けてからのお楽しみという、ちょっとした運試しの要素が魅力の一つになっています。だからこそ、顔に出会えた日は少し得をした気分になれるのでしょう。まるでちょっとしたおみくじのような感覚で楽しめるのも、パナップならではの魅力です。使用されているソースは、フルーツをまるごとすりつぶしたピューレをブレンドした「とろける果実ソース」で、フルーティーな香りと自然な甘みが感じられる味わいも、長年支持されてきた理由の一つです。ソースとアイスの層を交互に味わえる構造は、シンプルながらも飽きのこないおいしさを生み出しています。
4.昭和後期の子どもたちを夢中にさせた「掘り進める」楽しみ
1978年の発売以降、パナップは多くの子どものおやつとして食卓やお祭りの屋台、駄菓子屋の冷凍ケースに並びました。近所の商店やスーパーの冷凍コーナーでパナップを見つけては、お小遣いを握りしめて買いに走ったという人も少なくないでしょう。昭和後期に子ども時代を過ごした世代にとって、スプーンで少しずつアイスを掘り進め、断面がハートや顔の形に見えた瞬間は、ちょっとした発見の喜びだったのではないでしょうか。友だちと「今日は顔が出た」「自分はハートだった」と見せ合ったり、兄弟姉妹で取り合いになったりした記憶がある人も多いはずです。当時はまだスマートフォンもSNSもなく、こうした小さな出来事は家族や友人同士の会話の中だけで共有されていましたが、こうした体験は今もSNSなどで「昭和あるある」「懐かしいおやつ」として語られ、世代を超えて共感を呼んでいます。
5.時代とともに変化したパナップーリニューアルの歴史
パナップは1988年にチョコレート味が加わったことで売上を伸ばし、1990年には発売当初の2.5倍という過去最高の売上を記録しました。しかし1990年代後半以降、他社から発売された大容量で手頃な価格のバニラカップアイスとの競争が激しくなり、冷凍ケースの限られた売り場をめぐる争いの中でパナップの取り扱いは徐々に減少していきます。売上は2000年には1990年の半分以下、2008年には全盛期の5分の1にまで落ち込み、一時はブランドの存続が危ぶまれるほどの厳しい状況にありました。転機となったのが、発売から32年が経った2010年3月の大規模なリニューアルです。パイのミルフィーユから着想を得て、それまでの縦型のハート状ソースを、ホワイトチョコレートと重ねた横型の層状ソースへと変更し、パリパリとした新しい食感を加えたことで人気を回復しました。さらに2015年には、最初から最後までアイスとソースのバランスを均一に楽しめるよう、ソースをらせん状に充填する形へと進化しています。
6.今も生きる「スマイルパナップ」現行ラインナップ
2010年以降の主力商品では横型ソースが採用されていますが、当初のスマイル体験を懐かしむ声に応えるように、小さめサイズの商品では今も縦型のソースが再現されています。ぶどう・いちご・白桃の3種が入った6個入りの「パナップ マルチパック」では、フルーツをまるごとすりつぶしたピューレを使った「とろける果実ソース」が採用され、開けてみるまでどんな表情に出会えるか分からないワクワク感を今に伝えています。同じく縦型ソースを受け継ぐ「スマイルプラス+ パナップ」も、グレープやダブルチョコといった味で展開されており、当時を知る世代はもちろん、初めてパナップを手に取る子どもたちにも、笑顔のソースとの出会いを届け続けています。さらに近年は、北海道産の乳製品を70%使用した「パナップ 濃厚ぶどう」「パナップ 濃厚いちご」といった単品タイプも登場し、果汁・果肉の配合量を高めた濃厚な味わいで新しいファンを獲得するなど、時代に合わせた進化も続いています。
7.まとめー世代を超えて愛される理由
パナップの「スマイル顔」は、単なる偶然の産物でありながら、多くの人の記憶に残る特別な体験になりました。昭和後期にアイスを掘り進めた記憶がある人も、これから初めてパナップを手に取る人も、笑顔のソースに出会えたときのささやかな幸せは変わりません。40年以上にわたって形を変えながらも愛され続けてきたパナップは、味わいだけでなく「開けてみるまでわからない楽しさ」そのものが商品の魅力になっている珍しいお菓子だといえるでしょう。今度パナップを食べるときは、スプーンでゆっくり掘り進めながら、どんな表情が現れるか楽しんでみてはいかがでしょうか。
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